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氷頭なます

 氷頭なます(ひずなます)はサケの氷頭を使ったなますで、北日本各地にみられる。サケという魚は硬骨魚でありながら軟骨やコラーゲン成分が豊富で、特に目の前、つまり吻にはみずみずしいコラーゲンのかたまり、氷頭がある。だれが始めたのか知らないが、この部分をなますにする。私のごく個人的な感想とすれば、この料理の中心地は新潟で、ここから北海道を含む各地に広がったものではないかと思っている。 氷頭なますを最後に作ったのは、もう15年も前になる。そのときは、生のサケの頭を使った。しかしこの料理は、たしかに生のサケでもできるけれども、新巻など、加工鮭で作った方が格段にうまいのだ。そもそも、正月料理としてのひずなますはサケの捕れる時期と合わないから、確実に加工鮭で作られていたと分かる。 今回、たまたま丸一本の新巻鮭をいただく機会に恵まれたので、久しぶりにひずなますをすることにした。新巻鮭の頭のところ(今回はすでに二つ割りになっていた)、その目の前の部分を切り落とす。ただし上顎は邪魔になるので上顎の上、つまり背面あたりに沿って切り目を入れ、そこから背側だけを切り落とせばいい。これを先の方から薄く輪切りにする。薄さは好みで、やや厚いものを好む例もある。 酢大さじ2に、砂糖大さじ半分の割合で甘酢を作る。新巻鮭が甘塩なら、小さな容器に氷頭が浸かる程度の甘酢を加えて、そのまま放置する。塩気の強いものなら、まずは冷水でよくすすいでから、氷頭の倍量のかさの甘酢に浸ける。甘塩でも、塩の強いものでも、3時間以上酢漬けした方がうまくなる。氷頭をかじって、塩気がほとんど抜けていたら鬼おろしで粗くすった大根(絞らない)と和える。この時、甘酢は必ずしも全量を入れないで、好みの量だけ加える。私の場合、甘酢は少ししか入れない。 氷頭なますはたしかに、生のサケでもできる。しかし深い味わいは塩蔵したものでないと成立しない。