わけあってうなぎの老舗について、さまざまなことを調べている。調べるにはもちろん資料研究も大事だけれど、やはり実際に店舗に行ってみないと、分からないことだらけだ。資料だけで物事を考えてしまうというのは、ときにリアルからかけ離れてしまうことがあるから、注意が必要だと思っている。 さて、愛知の東、豊橋の本陣跡に丸よという明治初期創業のうなぎ屋がある。元は割烹であった織清の職人を雇い、江戸期からの宿屋がうなぎ専門店を始めた。織清はうなぎ料理を関東の流行りものとして出し始めた。ここ丸よに至っても、うなぎというハイカラ料理を扱うにあたって、皮目を上にして客に見せるという奇抜なアイディアを採用した。そこに別嬪の語源があるという。 丸よのうなぎは老舗としては関東風のほぼ西限にあたる(※関西には江戸流として関東風を扱うところがある)背開き、蒸しを加えたものだけれど、皮目にもしっかりとタレがつき、香ばしく仕上がっている。米は4代以上続く老舗の米屋から仕入れているもので、粒の小さなものを柔らかく炊いて、もち米混じりのような食感が魅力的だ。タレの味わいも少し醤油の際立った、東海地方としてはあっさりしたものとなっている。ハイカラ料理も姿を変えなければいずれ伝統の味となる。小さなお商売にこだわり続ける、うなぎ屋の姿ここにあり、である。
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