スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

2月, 2022の投稿を表示しています

京都の雑煮

私はもちがすきで、雑煮がすきなので、特に寒い時期たびたび雑煮を作って食べている。各地でその土地の雑煮を尋ねることも多いから、尋ね聞いた雑煮を家で再現することもひとつの趣味としている。 さて雑煮作りで最大の問題が材料の入手にある。各地の雑煮に加えられる食材の中には、地域的な流通でしか手に入らないものが多いうえ、時期限定でしか流通しないものもある。例えば愛知県、岐阜県のもち菜は、概ね正月を挟んだ2週間程度しか流通しない。福岡のかつお菜はまだましで、11月の末から2月の頭まである。だし材料はもっと難しくて、年末の2週間しか出回らないようなものもざらだ。 ここ福岡では、金時人参の入手が難しい。瀬戸内圏、あるいは近畿地方のひとびとからしたら信じられないだろうが、福岡で金時人参はほぼ出回ることがない。広島に本拠地をもつゆめマート系列やデパ地下ではいくらか出るが、それも年末年始の一部店舗に限られたことであって、松の内が明ける頃には完全に消滅する。わけあって1月の半ばにスーパーと道の駅をかなり回ったのだけれど、やはり見つけることはできなかった。 今年の雑煮は何にしよう。昨年の終わりに京都の上等な白味噌をいただいていたものだから、京都の雑煮が食べたいと思っていた。ところがどう探しても金時人参が見つからないものだから、といってわざわざ取り寄せて買うようなものでもないし、と考えているうちに寒も明け、節分が過ぎた。そんなさなかにようやくたまたま入荷したと思われる金時人参をスーパーの店頭で見つけ、ついでにいいかんじの里芋(これもいつも手に入るとは限らない)を買い揃えて家に帰ってきた。ちなみに、人参は熊本産だった。 京都の雑煮は味噌に丸もち。むかし京都に嫁いだひとから、旦那の実家の雑煮は人参、崩れかかったお芋、もちしか入っておらず、しかも味噌がくさくってどんな家かと思ったと聞いていた。たしかに、すましの具だくさんな雑煮を食べている文化圏の人間からすれば、味噌で具もシンプルな雑煮は、味噌そのものがうまいと感じなければかなり厳しい気がするし、意外に味噌はひとを選ぶ。私は普段からあらゆる味噌を使っていて、そのようなハードルはない。 水2カップに小さめの昆布を4枚、これを沸かして沸騰直前に取り出す。かつお節はふたつかみとり、沸かした湯の火を止めてかぶせ、しばらくしたら濾す。里芋は皮を剥いて1センチの輪

大根の皮は切干大根にする

 私は根が貧乏性だし、煮物にしても味噌汁にしても、大根の皮はたいていごく薄く剥く。料理の本には厚めに剥くという表記が頻出するけれど、それは家庭的ではないと思う。 そんな私もおでんをやるときだけは皮を厚く剥く。大根を太く輪切りにして、断面を見ると皮の内側に円を描く不透明な線がある。これのギリギリ内側を通るようにして剥くと分厚い長方形の皮ができる。この皮がもったいないので、薄皮とはちがって捨てずに使う。長方形になった皮を真ん中で真っ二つにして、そのまま細く刻む。刻んだら外に出して3日ほど干す。干物ネットに入れるのが楽だけれど、使い古しの木のまな板の上に広げて干したりもする。五分くらいの干し加減でひとつつまんでしがんでみるといい。ふしぎな甘みがある。大根の中でいちばん甘いのはたぶんこの部分だ。 しっかり干したら日を置かずに使う。さっと水洗いしたら40度くらいのぬるま湯に放り込んで完全に戻す。戻し汁も使うので、湯を入れすぎない。大根一本分でせいぜい1リットルくらいだろうか。もっと少なくてもいい気がする。この戻し汁が甘くておいしいので、少しだけ味見に飲む。でも飲みすぎると料理の味が薄くなるので少しだけ。茶碗に一杯くらいなら飲んでしまってもいいだろう。この汁、小さい頃風邪を引いたときに飲んだはちみつ大根を思い出す。 戻し汁、大根、そこに厚揚げか油揚げを刻んで加え、また鷹の爪も少し加えて、濃口醤油ときび糖少し、どちらも本当に少しだけ加えて強火で炊く。水気がなくなってきたら焦げないようにかき混ぜて、完全に水気を飛ばす。水が飛んでくると油揚げの脂分が仕事をして、味がよくなる。