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ドジョウの空揚げ、たたき揚げ、トマト煮

長いようで短かったドジョウ生活も一区切り。最後はこの3品を紹介しようと思う。

●空揚げ
これは定番の料理で、あまりドジョウを食べない地域であっても飲み屋のメニューにあったりする。もちろんもっともうまいのはアジメドジョウを使ったもの。でも、ドジョウでもおいしい。ドジョウは酒で大人しくして振り塩し、よく揉む。20分ほど置くとうっすらと塩味がつく。これを水洗いしながらざっくりぬめりを取って(ざるの上で洗うといい)、キッチンペーパーで握って水気を取る。片栗粉を厚いめにまぶして、油で揚げる。小さいもの、骨の柔らかいものなら3分もすれば揚がる。大きなものは投入時には160度、投入し終えたら130度くらいに落としてしばらく揚げて、最後に火を強くして温度を上げてから取り出すとよい。ひとつ食べてみて塩気が足りないようなら塩を少し振る。


●たたき揚げ
大きめのドジョウはたたき揚げにしてもよい。魚をたたいて(ミンチにして)揚げるというのはよくある手法で、今時はイワシくらいしかメジャーなものはないかもしれないけれど、アジやサバ、トビウオを使ったものが食べられてきたし、フナやナマズ、ドジョウを使ったものもある。要するに粘りのあまりないさつま揚げだと思えば、そこに至る延長線の手前側に位置するこの料理をいとおしく思えるかもしれない。
ドジョウは酒で大人しくしてから塩を加えてよく揉み、しっかりとぬめりを落とす(完全に取れることはない)。頭と胆嚢(これは大抵頭を落とすときに一緒に取れる)、尾びれを取り、あとはひたすらに包丁でたたいてミンチにする。指の腹でさわってみて、ほとんど骨が気にならなくなったら十分で、ここにわずかに塩を振って3分ほど置く。ここへ溶き卵を加えて、よく水気を切った木綿豆腐を手でしっかり潰して混ぜる。あとは薄力粉を加えて、練る。これでたねができあがる。分量はドジョウ中ぐらいのもの25匹に対して、卵1個、豆腐4分の1丁、薄力粉が大さじに2杯。本来は豆腐を加えてからすり鉢で擂るなり、フードプロセッサーにかけるなりして、均一に、かつきめ細かく混ぜるべきところだけど、適当にムラがあるほうが味わいは面白くなる。できあがったたねは結構ゆるい。大きなスプーンで掬ってまとめ、油に放り込んでいく。温度は少し低いめの140度くらいでゆっくり揚げるのがいい。ときどきひっくり返していると、次第にぷっくり膨らんで、軽くなってくる。これはそのまま食べてもおいしいし、ポン酢をかけても、あるいは白味噌を塗って食べてもよい。


●ドジョウのトマト煮
大分の養殖ドジョウを賞味して、これはトマト煮にもなるなと思い立つ。本来ウナギを使ってやる方法を、そのままドジョウでやってみる。大振りのドジョウを開いて、頭、内臓、骨を取り、適当なサイズに切り分けて(2ないし3等分)から、わずかの塩コショウと白ワインビネガーでマリネする。皿にドジョウを広げて、上から振りかけておけばよい。フライパンににんにくと唐辛子、それをオリーブオイルで炒めて、油に十分香りが移ったらマリネしたドジョウの両面をソテーする。中は半生でいいので、表面だけ焼けたら一旦皿にとる。フライパンに今度は玉ねぎ、これはみじん切りでも、くし切りでもなんでもいいけれど、入れて炒め、火が通ったらカットトマトを加えて、ドジョウをこの上に乗せて、白ワインを適当に加えて煮る。煮る時間は5分程度。あとは塩コショウで味を整えたらできあがり。スパイスはコショウだけでも、ローリエを加えてもいい。おいしいことはおいしいけれど、ウナギのような深みはなく、案外普通の白身のような味わいになる。


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