ヒシという植物がある。流れのゆるやかな川や水路、湖にあるもので、葉は水面に浮いているだけのものだが、その実が食用になる。日本のヒシには色々な種があるが、そのいずれもが鋭い棘をもっていて、刺さるととても痛い。川で魚を捕っていてこのヒシの実が邪魔になったという経験者も多いだろう。最近は用水路の整備が進んで、あまり身近な植物とは言えなくなってきた。
普通のヒシの実は小さくて、しかも棘があるから食べるとなると案外面倒だ。夏の終わりごろの若い実は柔らかいので、捕ってそのまま剥いて食べられる。かつては子供たちのおやつになっていた。このヒシの仲間にトウビシという、舶来の改良品種がある。ときに鬼ビシとも呼ばれるこの種の実はひじょうに大きく、また棘もないので食べやすい。鬼というのは大きいことからか、あるいは赤鬼を連想させるような赤みからだろうか。福岡や佐賀の一部では今も少数ながら栽培されていて、福岡市内でもたまに見かけることがある。懐かしい気持ちで1パックを買い、茹でて食べてみる。ほのかに甘みがあり、たいへん香りがいい。これはヒシならではでもあり、いくらか栗を思わせるような味わいだ。このトウビシ、茹でてそのまま食べるのもいいけれど、炊き込みご飯にするとその良さがもっともよく味わえる。トウビシの実は水洗いしてから30分ほど水に浸ける。たっぷりの水で水から茹でて、8分ほど茹でる。中までしっかり火を通すならこの倍くらいは茹でないといけないが、炊き込みご飯なら硬めに、要するに半生にしておいたほうが香りが残る。茹でた実を割って外殻を剥き、適当な大きさに切る。ご飯三合に対して、実が最低でも10個はほしい。もちろん、多いに越したことはない。米は洗って30分以上浸水させ、風味付けに薄口醤油と酒を各大さじ1ずつ加えたもの、そこにトウビシの実を乗せて炊く。余計な具は加えない。
炊きあげるさなかにもヒシの豊かな香りが部屋中に広がる。湿地帯の秋のめぐみである。佐賀県では在来のヒシ(和菱)の収穫も行われており、これらは菓子や焼酎の原料となっている。
普通のヒシの実は小さくて、しかも棘があるから食べるとなると案外面倒だ。夏の終わりごろの若い実は柔らかいので、捕ってそのまま剥いて食べられる。かつては子供たちのおやつになっていた。このヒシの仲間にトウビシという、舶来の改良品種がある。ときに鬼ビシとも呼ばれるこの種の実はひじょうに大きく、また棘もないので食べやすい。鬼というのは大きいことからか、あるいは赤鬼を連想させるような赤みからだろうか。福岡や佐賀の一部では今も少数ながら栽培されていて、福岡市内でもたまに見かけることがある。懐かしい気持ちで1パックを買い、茹でて食べてみる。ほのかに甘みがあり、たいへん香りがいい。これはヒシならではでもあり、いくらか栗を思わせるような味わいだ。このトウビシ、茹でてそのまま食べるのもいいけれど、炊き込みご飯にするとその良さがもっともよく味わえる。トウビシの実は水洗いしてから30分ほど水に浸ける。たっぷりの水で水から茹でて、8分ほど茹でる。中までしっかり火を通すならこの倍くらいは茹でないといけないが、炊き込みご飯なら硬めに、要するに半生にしておいたほうが香りが残る。茹でた実を割って外殻を剥き、適当な大きさに切る。ご飯三合に対して、実が最低でも10個はほしい。もちろん、多いに越したことはない。米は洗って30分以上浸水させ、風味付けに薄口醤油と酒を各大さじ1ずつ加えたもの、そこにトウビシの実を乗せて炊く。余計な具は加えない。
炊きあげるさなかにもヒシの豊かな香りが部屋中に広がる。湿地帯の秋のめぐみである。佐賀県では在来のヒシ(和菱)の収穫も行われており、これらは菓子や焼酎の原料となっている。