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干しアユでそうめん

今年も暑いあついと嘆く日々が始まった。あついのはまことに悪い。まず、からだがつねにしんどくなる。そして、食べ物がすぐに傷む。刺し身を造ってもすぐにぬるくなる。これは酒も同じだ。今年はそこに輪をかけてのマスク生活で、からだの発熱がとんでもないことになっている。
先週は一度あずきがゆと鶏ごはんを作ったくらいで、ほぼ全く自炊のない1週間だった。とはいってもまともな飲食店は開いていないので、牛丼、ハンバーガー、弁当の粗末な生活だ。仕事が忙しすぎると生活が貧しくなる。さらに間の悪いことに体を傷めてしまう。はっきり言ってこれは重労働の反作用である。いい加減にしてほしい。
さて、からだを休める休日にあっても、なにかものを食べなければ生きてはいけない。しかしあついので凝ったことはしたくない。考えた結果としてそうめんとする。干しアユを使った遊び心のあるものだ。
鍋に水3カップ半をはり、干しアユ2、と干し椎茸を大きなの1個分入れて1時間待つ。干し椎茸ははじめから刻んで乾燥させてあるものを使った。中火にかけて沸いたらあくをとり、5分ほどしたら薄口醤油50cc、酒とみりんを各25cc加え、再び沸いてきたら超弱火に落とす。これを30分そのまま炊いて、火を切り冷ましておく。味が濃すぎるようなら水を少しだけ足す。
そうめんは普通に茹でて冷水にとる。うつわにそうめんを盛り、つゆをかけて、みょうが、干しアユ、ねぎをかぶせる。おわり!


好みで梅干しをあしらってもいい。干しアユと干し椎茸の妙味はあつくてもいやみがなくて、あっという間に食べられる。残り汁は出し殻もろとも糖類を加えて煮詰め、ご飯の供、茶請けにしたらいい。干しアユには独特の油焼け香があるから、しょうがを刻んで加える。凝ったことはしない。あついからね。

調味料分量の比率は下記を参照した。
https://life.ja-group.jp/recipe/detail?id=5105

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