沖縄にはじめて入ったのは2006年のことだ。その年は春の石垣を訪れて、しかし当時さほど海の魚に興味のなかった私は、ほとんどの時間を川と山で過ごした。はじめて見るマングローブの林に感激し、いくらでもいるキバウミニナに驚き、また河岸の自然度に大負けした数日間だった。その後はしばらく訪問する機会がなかったけれど、2010年以来だからだいたい10年来、毎年沖縄のどこかの島を訪れてきた。しかしこの滞在の多くが研究や採集を目的とした滞在であり、限られた日数の中で成果を最大化すべく、全くまたはほとんど余裕のない日程を組んでしまう。したがって、沖縄ではなかなか自由がない。特に苦しかったのは水揚げされている多様な魚たちを食べる機会に恵まれないことで、これは長年私の中での課題だった。研究と食の両立、特にフィールドでの両立はきわめて難しい。
このたび、社会を覆う災厄の隙間をぬうように沖縄を訪問した。主たる目的はもちろん、魚を食べることである。入島前から入念に食べてみたい魚と、その料理法を検討し、期待に胸を膨らませた。友人の協力もあってあらゆる調理道具を揃え、現地入りしてから盛り付けの皿も吟味のうえで購入した。器屋のおばぁとは久方の再開を喜んだ。ここは私にとってのニライカナイである。観光でもっている沖縄の、心からの喜びを見聞きすることができ、たいへんうれしい気持ちになった。
1日目には調理に割ける時間が少なく、ゆえにきわめて簡素な料理のみとなる。やんばるの川で拾ってきたミナミテナガエビのから揚げ(素揚げ)。スクの刺身、さかなの味噌和え(うちなんちゅは味噌和えがすきだ)、そして、ミキユことオオクチユゴイのマース煮とする。昨年の晩秋に食べたミキユがたいへんいいものだったので、これは現地で改めて冷凍していないものを食べようという意図だったが、想像通りにこの時期、すなわちは梅雨明けのものにもしっかり味が乗っていて、うまさ十分であった。食べはじめるともはや2時を回っている。そんなこんなで沖縄魚旅は始まったのだった。
このたび、社会を覆う災厄の隙間をぬうように沖縄を訪問した。主たる目的はもちろん、魚を食べることである。入島前から入念に食べてみたい魚と、その料理法を検討し、期待に胸を膨らませた。友人の協力もあってあらゆる調理道具を揃え、現地入りしてから盛り付けの皿も吟味のうえで購入した。器屋のおばぁとは久方の再開を喜んだ。ここは私にとってのニライカナイである。観光でもっている沖縄の、心からの喜びを見聞きすることができ、たいへんうれしい気持ちになった。
1日目には調理に割ける時間が少なく、ゆえにきわめて簡素な料理のみとなる。やんばるの川で拾ってきたミナミテナガエビのから揚げ(素揚げ)。スクの刺身、さかなの味噌和え(うちなんちゅは味噌和えがすきだ)、そして、ミキユことオオクチユゴイのマース煮とする。昨年の晩秋に食べたミキユがたいへんいいものだったので、これは現地で改めて冷凍していないものを食べようという意図だったが、想像通りにこの時期、すなわちは梅雨明けのものにもしっかり味が乗っていて、うまさ十分であった。食べはじめるともはや2時を回っている。そんなこんなで沖縄魚旅は始まったのだった。