料理の楽しみ、というのがある。長く料理をつづけていくためには、とにかく楽しむことが重要だ。
楽しむためには、ストレスにならない程度に何らかの制約をつけてやるのが簡単だ。よくあるのは1ヶ月何円以内でやる、みたいなもの。限られた金額の中で、いかにおいしく食べるか、さながらパズルのような食材との駆け引きを楽しんでみる。そういう書籍も出ているが、こればかりでは気持ちが苦しくなる。だいたい、1ヶ月スパンだとミッションをクリアできたという達成感を味わえる頻度が低すぎる。かといって、1日ごとに決めてしまうと縛りがきつすぎて疲れてしまう。
たとえば、夕食には必ず汁物をつける。これを決めると、ミッションをクリアするだけではなくて、献立を決めるのが楽になるという利益を得られる。献立というのは無限に考えられてしまうから、ときに考えることに疲れてしまう。なので、汁物を必ずつけると決めてしまえば少なくとも一品、選択の幅がぐっと狭まってくれる。
このように、一定のルールを決めることは選択の苦しみから解放してくれる。フライパンひとつでできるものにする、というような、道具で制約をつけるのもいい。私の場合、夕食は30分以内でできるもの、と決めておいてある。ただし、魚料理についてはこの限りでない。時間のかかるものは、夕食の時間だけに作らないで、あらかじめ下準備を済ませておくようにしている。
ルールを決めると、不思議とこのルールを破りたくなる瞬間が必ず訪れる。そんなときは大胆に、ためらいなく思い切りルール破りしてやる。そうすると、言い知れない解放感、自由な発想の気持ちよさで、とても料理がはかどる。いつも自由よりも、こうしてときどき、たまに自由があった方がうれしいのが人間の不思議なところである。要するに、飽きないようにやる、ということが大事なわけだ。
私の場合、地域の古い味付けを再現したりすることもあり、そういうときには徹底的に脳みそを使っている。その分息抜き的な料理も必要で、バターしょうゆごはんとか、トンテキとか、パスタ、こういうものが息抜き要員となっている。カレーもひとつの息抜きである。カレーはきわめて単純な、期待どおりに応えてくれる足し算の料理だ。足し合わせたとおりの味になる予定調和感、そきてこれを比較的手軽に味わうことができるのはカレーならではかもしれない。
もちろん、ときどき料理を作らないようにすることも大切なことだ。