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クエのカレー

 さて前回の更新から実に1ヶ月もの期間があいてしまった。更新ができなかった大きな理由は緊急事態宣言に伴う通勤時間の消失で、これがないとこのブログの更新ができない(というルールにしている)。今回はリハビリ的な記事として、クエでカレーを作ったことを書き留めておく。

緊急事態宣言ももう実に何度目かというところになって、日本列島はボロボロである。私の心を痛め付けているのは飲食店とその関連サービスへの適切かつ十分とは言えそうもない金銭的支援の内容だ。手続きの遅れから閉店を余儀なくされた店もある。飲食店、特に酒を伴う食事、宴会といったものが大きく規制される中で、魚の値段は大暴落している。特に高級魚、大型の魚は軒並み値を下げている。そういうわけで、いくつかの魚とともにクエを買ってみた。4キロのクエを丸で買い、おろして4日後にクエ鍋をした。とにかくぜいたくにたくさんの身を入れたのだけれど、その身が余ったままで散会となった。普通なら、翌朝にそのまま温めて食べたり、あるいは雑炊にしたりする。でもなんとなくそういったものがつまらなく感じて、とにかく暑いし、夏至だということもあってカレーにアレンジしてしまうことにした。

カツオと昆布でうすくだしを引き、薄口醤油大さじ1杯と酒2杯で味をつけたクエ鍋にはクエの身が8個くらい余っていた。だいたい2センチ前後の幅で切って落としてある。これを使う。

まずはかぼちゃのペーストを下準備しておく。かぼちゃの種を取り、皮を剥いて厚さが2センチ程度になるよう小さめに切り、耐熱ボールに入れてレンジにかける。700ワットで5分、様子を見てさらに5分かけると明確に火が通った香り、ふかした芋みたいか香りがしてくる。このかぼちゃ550グラムに対して、にんにくを4かけ、大きめのたまねぎ半分をみじん切りにする。フライパンにサラダ油を大さじ2杯、ここににんにく、たまねぎを加え火が通ったら先のかぼちゃを加えてへらで潰しながら弱火で軽く炒める。数分で止めて、冷えたら小分けして冷凍しておく。これでいつでもかぼちゃのカレーが作れる。裏ごしなんてしてもいいがカレーなのでしなくていい。また完璧に潰せていなくても、冷凍するときにラップの外から指でよく潰しておけば十分だ。

今日のカレーは1人前。フライパンに油大さじ2杯、そこにクミンシードと唐辛子を好みの量加えて、弱火で熱してよく香りを出す。先のカボチャを120グラム加えて炒め、かぼちゃの炒まったにおいが出てきたらクエ鍋の汁を1カップ加えて、中弱火でよく溶く。かぼちゃが馴染んできたところにクエの身、くし切りしたトマト半分、適当に切った巨大なきゅうりいくらかを加えて、2分ほど煮たらコリアンダーパウダーとカルダモンパウダーを少し加えて火を止める。味が足りなければ塩を足す。今回はやや煮詰まったクエ鍋についた塩気だけで十分だった。


私はかぼちゃのペーストを使った魚のカレーがすきで、最近は作らなかったが昔は頻繁に作っていた。勝手にとろみがつくし、かぼちゃの控え目な甘さがいい。今回のカレーももちろんうまかった。

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カワムツという魚がいる。海のムツではなく、川のムツ。ムツというのは古語である。海のムツといえば今や高級魚の末席にあるような魚だけれど、カワムツはどうだろう。昔持っていた釣魚図鑑には不味と書いてあったし、そのほかの文献を読んでみてもオイカワより味は劣る、とか、とにかく比較的評判が悪いことが多い。私は幼少の頃からオイカワのおいしさを知っていたものの、カワムツについてはこうした事情からかなり最近まで食べる機会を逸していた。そもそも、カワムツはオイカワに比べると川の上流側、淵のような深いところにいることが多くて、私の主な活動範囲である平野部の浅い水路にはなかなか出てこない。少なくとも愛知県ではそうだった。 西日本で一般に川の小魚と言えばオイカワになると思うのだけれど、山手に進むとカワムツに変わる。たしかに、ここ九州でもカワムツはオイカワよりもより上流まで分布している。ヤマソバヤという呼び名は山にいるはやという意味をもつ。この山のハヤがひとびとにとっての重要なタンパク源であったことは疑う余地をもたない。その割に文献資料に欠けるので、やっぱり自分の足で昔の記憶を尋ねて歩く必要があるし、単にハヤとされている資料ではそれがカワムツであったのかオイカワか、またウグイやその他かということが分からない(文脈で分かることもある)。 さてそのカワムツを食べたくて、水辺に出掛けては黒々と群れをなしているところに突っ込んで、大小を取り合わせて持ち帰る。この時期は暑さですぐに肉が痛んでしまうから、よく冷やして持ち帰る。川のハヤは焼いたり揚げたりして食べる分には鱗をとる必要がない。大きなものは腹の中央あたりに包丁の切っ先で小さな切れ目を作り、そこから絞るようにして内蔵を押し出す。口からまっすぐではなく、少し尾がせり上がるようにして串を打つ。すなわち、串の先端は内臓の空洞を通って、臀びれの末端あたりから出す。平たい串を使えばこれでも魚が回ることはない。普通の塩焼きに比べたらかなり多い量の塩を振って、"塩だまり"ができるようなかたちで、手で塗りたくるようにして全身に回す。これをうまく焼き上げたら塩焼きとなる。家庭用の魚焼きグリルでも問題なくできる。はじめは強火で表面の水分を飛ばし、あとは弱火にして25分ほどかけて焼き上げる。焦がしすぎてはいけない。中まで焼けているかどうかという...

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