炊き込みご飯の類はたいてい炊飯器で作っている。これは鍋で作ると普通の家庭では真似できないだろうから、という理由と、私自身が手前を減らせる炊飯器がすきだから、というふたつの理由がある。
色々な料理をするときに、うまくできる最低ロットはどのくらいか、ということをよく考える。私は独り暮らしだし、今や単身あるいは二人家庭も多い。昔の食事は大所帯が前提だから、そのままのレシピを現在に転用できないことも間々だ。炊飯器で作る炊き込みご飯の場合、私は2合半がそのうまくできる最低ラインだと思っている。2合でもできる場合はあるが2合半あると米の上に具材を乗せてもある程度、理想の程度には汁に浸かる。
柳川の松本鮮魚さんにお願いして、産卵期のボラを都合してもらい数日食べている。ここでは瀬戸内のボラ飯を作ってみたのでその作り方を書いておきたい。ボラの肉150グラム(実際にはもう少し多くても構わない)の皮をとって、厚さ2センチ程度の大きめの削ぎ切りにする。丼鉢にうまくち醤油を100ccとり、ボラの肉を浸す。背骨があればこれも同じく醤油に浸す。これで1時間ほど置くとしっかり浸かる。
小さめのにんじん1本は縦に薄切りにしてから細かく切り、洗いごぼうを1本をささがきにする。里芋は皮を剥いて、輪切りにしてからさらに縦にいくらか、にんじんよりは少し大きめに切る。しいたけ2枚は石づきを取って薄切りする。
米2.5合を研いで、2.5合分の水加減で1時間置く。ここににんじん、ごぼう、里芋を加えて、その上にボラの漬け身、しいたけ、漬け汁を全部加えて、炊き込みご飯モードで炊く。炊き上がったら骨の部分は取り出して、肉がほぐれるように全体を混ぜ合わせる。この料理の味付けは本来醤油だけだけれど、好みで甘みをつけてもいい。分量で言えば白砂糖を小さじに1から3杯くらい。
この時期のボラにはしっかりと脂が差していて、うまみもある。風味が足りないので面白みには欠けるものの、優等生の魚であることには間違いない。尾の方の肉を使えば小骨もなく、鯛めしなんかよりずっと楽チンだ。