東南アジアに行くとふと素朴な牛のスープに出会うことがあり、これがなんとも心を落ち着かせる存在であったりする。油も、香辛料もぜんぜん入っていないような料理の存在はビジターの我々にとってとても重要だ。
そろそろ冷凍庫を整理すべきシーズンとなり、冷凍庫のあらゆる食材を調理しては食べている。大昔にもらった鹿肉の塊が出てきたので、前のあんかけスパのもと作りに同様、丸一本の赤ワインを使いきって肉を炊く。牛の肩肉?もあったのでこれと合わせて1.8キロをひとつの鍋で、あわせて5時間ほども炊く。けもの臭さは炊く時間を長くすれば抜けていくので、蓋をしないで、湯気で窓を曇られながら炊いていく。最後は汁気がなくなるまで炊きあげて、小分けして冷凍しておくとあんかけスパのもとだけでなく、なにかと使いやすい。チャーハンにいれてもいいし、もちろんカレーにもなる。
いくらか冷凍用に小分けしたあと、残りの部分に汁気を足して夜食を作った。炊きあげ肉一掴みに、水を3カップ加えて、沸いたら白菜の細切りとねぎを加える。ここにそばだしを小さじに1、塩を少々で仕上げる。そばだしというのは沖縄で売られている濃縮タイプの沖縄そばのもとで、こんなものがなくてもわずかに化学調味料を加えてもいい。要するに肉のうまみだけでは少しバランスが悪いので、別のうまみと合わせてやるというだけだ。鹿の肉は赤くて、脂気がぜんぜんない。疲れきった体にこの夜食を吸い込み、台湾の夜を思い出していた。