福岡ではサワラとして売られている切り身のほとんどが標準和名で言うところのサワラである。ただし、稀にカマスサワラがサワラとして売られているケースがある。福岡産ではまずあり得ないが、長崎、鹿児島産なら可能性がないとは言えないし、実際に年に数回は見かけている。サワラとはかなり肉質が異なるので、クレームにならないかと勝手に心配してしまう。
サワラとの区別はそこまで難しくない。肉の色がごくごくわずかに黄色みがかっていて妙に透明感がある。皮があればもっと簡単で、サワラに特有の五月雨模様がないうえ、細かい鱗の痕跡が見える。サワラならほとんど目立たない。色は背側ならほぼ黒で、腹側なら銀色、不明瞭な縞模様が入っていることもある。
カマスサワラは肉に酸味があって、炊くとかたくなる。こういう肉は煮物もだめではないが、炒め物に向いている。それで、ソーミンタシャーである。タシャーではなく、タ・シ・ャー(ヤーが小さい)。タシャーとは簡単な炒め物のことを指す。ソーミンチャンプルーと言っても誤りではないそうだけれど、シンプルで、かつ豆腐の入らないようなものならタシャーと呼んだほうがいいらしい。
サワラの切り身を短冊に切ってしまう。小指くらいの太さにする。フライパンに米油を敷き、表面に火が入るまで炒めてから、さらにソーメン、甘長とうがらしを加えて油が絡むようにして炒める。味付けは醤油と塩コショウを最後にする。コーレーグースをたっぷりかけて食べる。切り身の魚は、煮つけ用、照り焼き用、フライ用などと書かれていて、見るからにその形のままで使えと命令しているかのように思われるかもしれない。しかしそんなことは完全に無視してじゃんじゃん切って、炒めたらよろしい。