私は小さい頃異常なほどにきなこもちが好きで、このもちをしょっちゅう食べていた記憶がある。このあるごとに祖母からもらうつきたてのもち、そして近所の振る舞いで年に数回我が家にやってくる五目もち(ただしこういう呼び名があったわけではない)の中でも真っ先に食べていたのがきなこもちだった。それがいつしかあまり食べなくなり、家でせがむこともなくなった。おそらく、中学に上がる頃には自分の中での“流行り”は終息していた。
ところで最近はときたまきなこもちが食べたくなることがある。それで、我が家には上等なきなこを常備することにして、食べたいときにきなこもちを食べる。
はじめてきなこの調合を任された時、こんなにたくさんの砂糖を入れないと理想の味にならないのか、と思ったものだ。それはポテトサラダにマヨネーズが思ったよりもたくさん入っていることに似ている。きなこ(味付けきなこ)はとにかくたくさんあった方がいいから、余ってもいいのでたくさん作る。当たり前だがきなこというのは大豆の粉で、おのずから甘みがあるわけではないので自分で調合する。分量はきなこと、上白糖をかさで等量入れてかまわない。少し甘さを控えるなら、上白糖の量はきなこの8割程度にする。ここに塩を少々加える。きなこの総量にもよるので少々としか書けないけれど、少なくともたしかに塩が入っていると感じられる程度に加える。ぜんざいにも塩が入っているでしょう、この塩が大事。もちは解凍したら焼いて、焼き上がったものを沸騰した湯に放り込む。20から30秒ほどで取り出し、きなこをたっぷりとつけて食べる。焼いただけではもちの表面にきなこがつかない(小学生の自分の失敗を書いている)。
きなこは、一度つけるだけにしないで、ひとくち食べては断面にまたつけ、を繰り返して食べていく。昔、きなこもちをたくさん食べる時に、湯を横に置いて、湯にもちを通しながら食べていたような記憶がある。あれはどこの記憶だろうか。ちなみに、きなこもちにさらに佃煮の汁をかけて食うとうまい。