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ふなめしの作り方

話が前後するけれど、岡山にふなめしというものがある。これは私が勝手に、日本三大ローカルフナ料理と思っているもののひとつで、一定の年齢以上の岡山の一部住民にとってはソウルフードとも言えるものである。一時は岡山市や倉敷市、総社市といった地域で猛烈に地域おこしとして各種イベントが展開されたものの、現在は落ち着きを取り戻している。
冬場、寒くなってフナのにおいが落ち、脂がついてくるとこのふなめしのシーズンとなる。ふなめしとはフナのたたき身、ミンチを使った汁かけ飯であり、元々は地域によってトントンメシ、トントコメシ、トントンジル、カケメシ、などとも呼び習わされていたものである。ふなめしのユニークさがことさら強調されがちだが、実は環瀬戸内の海浜漁村にとって、たたき身を使った汁かけ飯、あるいは汁かけそうめんは一般的な普段食だ。海浜部ではゲタ(ウシノシタ類)、エソ、アジ、キス、タイ、トビウオなどがこのかけ汁に利用されてきた。ふなめしはたたき身のかけ汁であるという点においてはこの環瀬戸内文化圏の自然のうちにある。しかしながら、先に油で炒めるという工程を挟むことは特筆すべきユニークな点にほかならない。
さて、トントコメシとあるとおりに、かつては寒空の下、玄関先でフナを骨ぐるみ(骨ごと)に叩く光景が冬の風物詩であった。それが、なかなか身近でフナが捕れなくなったことなどで、現在では川魚問屋や市場、スーパーで売られているふなミンチを買い求めるのが普通になってきている。ふなミンチは現在でも各所で購入可能だが、次第に取り扱う店の数が減っているような気がしている。
岡山を旅して、たくさんのふなめしのレシピを聞き込み、また食べてきた。ここでは吉井川流域で育った方のふなめしの一例をやってみたので紹介したい。もちろんそのエリアだからといって、すべてが同じレシピというわけではない。数多くの家庭の味の多様性があり、そこに地域性がある。これをきちんと理解するためにはよりたくさんの情報が必要だ。
では、ふなめしの作り方。こちらはだいたい3人分の作り方となる。ふなめしは1人で食べるよりも、大勢で食べたほうがうまい。ごぼう20グラムと皮を剥いたにんじん30グラムは斜めに、厚さ3ミリ程度にそぎ切りし、これを幅5ミリ程度に細切りする。ごぼうは切ったら水にさらす。コンニャク50グラムは厚さ5ミリ程度の薄切りにして、幅5ミリ程度、厚揚げは幅3ミリ程度に細切りする。里芋は皮を剥き、厚さ1センチほどに切って下茹でする。火が半分通るくらい。適当に水から中火で煮たらいい。深めのフライパンか鍋に米油を30ccほど敷いて、温まったらフナみんち200グラムを中弱火で炒める。はじめはくすんだピンク色のフナの肉が、次第に灰色になっていく。灰色になりきってからも、さらにしぶとく炒めていく。少し焦げ目がついてきたら、ここにごぼうとにんじん、こんにゃくを加えて1分ほど炒め、水2カップを加える。中火から中強火にして煮立てるとあくが上がってくるので、これを5分ほど丁寧にとり続ける。その後さらに水1カップ半と下茹で里芋を加え再び沸騰させ、また出てきたアクを5分から10分ほどかけてすべて取り除く。
厚揚げを加えてからうすくち醤油大さじ2杯と、塩少々(これは好みで)で調味する。甘みは加えない。炊きたてのご飯に汁ごとかけ、最後に刻んだセリとねぎを合わせる。好みで七味や山椒を振ってもいい。私は山椒がよいと思う。


3人前にフナ200グラムというのは、かなりフナが多い作り方だ。話者によればフナが多い方が味が出ていいのだという。汁のうまみはすべてフナのものであり、根菜とあいまって体が芯から温まる。ふなめしの味つけはこいくち醤油のみであったり、うすくち醤油のみ、半々、あるいはみりんや砂糖で甘みを加えることもある。具材についてもバリエーションが豊富で、ときにふなミンチだけのふなめしというものもあったという。自分好みのふなめしを自作しながら見つけていくというのも面白いだろう。

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