カマスサワラの肉を使ったソーミンタシヤーは前にも記事にしている。なので記事にするのは二度目なのである。 ソーミンタシヤーは、飲食業上はソーミンチャンプルーもしくはソーメンチャンプルーと呼ばれているが、やはりタシヤー(もしくは発音の都合上タシャー)だと思う。そのへんで出会ったおばーに聞くと、タシヤーである。さてそのソーミンタシヤーにも家庭によっていくつもの作り方があるのであって、もっとも簡易なものでは湯がいたソーメンを油で和えるだけで炒めもしない。具材もきわめて多彩で、具なしから具沢山までなんでもありのようだ。 さて家で食事として作るなら、多少は野菜がほしい。さらに味気のあるものであってほしいとなるとやはりツナ缶を使ったものがいちばんだと思う。ツナ缶は安いし、うまみの付け足しにはもってこいだ。 一度にぜんぶ食べてしまったけれど、ここでは二人前として作る。先に野菜を準備する。とは言っても余りの玉ねぎ半玉をくし切りに、ねぎ1本を適当に切る。唐辛子も刻む。たっぷりの湯で素麺を二束、固めに湯がいてざるにとる。固めというのは、茹で時間でだいたい30秒ほど。水をかけたりしないでここに油をかけ、箸でざざっと動かして油をなじませておく。 ツナ缶(油漬け)は缶を開けたら油のところをフライパンに入れる。大きめのフライパンを使うのがよくて、我が家ではテフロンの深いフライパンがあるのでこれを使った。火にかけ、玉ねぎと唐辛子をさっと炒めたら、先に茹でておいた素麺(一塊になっている)を小さな塊ずつほぐし取り、少々平たくしてフライパン全体に並べる。ちょうど、モズクの天ぷらをするときのようなイメージで小さな塊を並べて、中火~中弱火にかけておく。炒めようと、動かそうとせずに、とにかくほっておく。好みの焦げ目がついてきたら水を少々加えてフライパンから剥がすようにして混ぜ、さらにねぎ、ツナを加えて混ぜる。最後、少しだけナンプラーを振って完成。ナンプラーでなく、醤油とか、塩コショウでもかまわない。素麺とツナ缶に塩気があるから、最小限でいい。
福岡や佐賀では冬になると高菜を植えている家が多い、ということは歩き回ると分かってくる。小さな家庭用の畑に、何列も植えている家もあって、それはもっぱら高菜漬けを仕込むためだ。とは言え高菜漬けになるような大きな株になるまでの間、少しずつ若い菜を食べていく。若い人のことは知らないが、少なくとも今も年寄りはそうしている。高菜は渋みと辛み、要はクセがあるので、炒めて食べるか、もしくは煮て食べる。煮て食べるにしても一回さっと湯に通しておくと食べやすくなる。 この若い高菜のある時期に、高菜を「川のもんと炊く」というのは誰からともなく聞かれる言葉で、たしかに個性のある川のもんとの相性はいい。ここで言う川のもんとは、オイカワやフナや、あるいはテナガエビやモクズガニのことで、こうした生き物がちょうどこの時期の堤返しや、水落ちで捕れた。今はそうした慣習もほとんどなくなり、高菜は海魚や油揚げと炊かれている。 モクズガニの雌が手に入ったが美しい川で捕れたものではないので、塩茹でで食べるのは躊躇した。そんなタイミングで若い高菜を見つける。カニは持ち帰ってチョロ流しの水道水で1時間ほど泳がせてから、熱湯に放り込んで殺して、1分ほどでざるにあける。熱湯に放り込むと、一気にバラバラ死体になる。ふんどしを外し、甲を開いてエラだけを取る。ここまでしたら鍋に戻して水から中火にかけ、沸騰したら少しだけあくをすくって10分ほど炊く。好みの醤油を少し加えて味を付けたら、高菜を加えてしなっとするまで炊く。汁は多めで、煮物と汁物の役割を兼ねるようにする。汁にカニの油がたんと出て、それを吸った高菜がうまくなる。