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あまさぎの煮付け

いまワカサギの料理となると、家庭では揚げ物が多いはずだ。かつて、特に産地にはワカサギを醤油で煮付けて食べる(汁気をしっかり保っているもの)文化があって、それは少なくとも宍道湖にも存在した。現在、宍道湖でワカサギを捕ることはできない。個体群として消滅したためである。宍道湖での呼び名はあまさぎだ。 さて現在、ワカサギの資源が唯一増加しているのが琵琶湖である。琵琶湖では本種は外来種で、本来歓迎すべき魚ではない。しかし漁業者には貴重な収入源になるため、表だって駆除などは行われていないしその動きもない。琵琶湖での稼ぎ頭はアユ(コアユ)だ。ワカサギの増加がアユの資源に影響を与え、根本的に持続的な漁業が成立しなくなる可能性を危惧している人間は私以外にもいるだろう。冬から初春にかけて、産卵のために琵琶湖の湖岸や流入河川に集まるので、みなこぞってこれを掬いに行っている。その熱気はかつて(1990年代以前)のホンモロコを彷彿とさせる。 さてそんなワカサギをいただいたので、大きさで選って煮付けを作る。小鍋に水1リットルを沸かして、沸いたら拍子切りの大根をいくらか加える。ここに濃口醤油を大さじ2、地伝酒を大さじ1.5から2加えて、強火で沸き立ててワカサギを1匹、また1匹と煮汁が冷えすぎないように加えていく。15匹加えて、そのまま強火でいるとあくが集まってくるからこれを掬い、中火に落としてしばらくあくを掬う。ワカサギは触ると崩れていくのでできるだけ触らない。あくが出なくなったらまた少し火を小さくして、梅干し(甘みがなく、酢も使っていないもの)を加えて10分ほど煮る。汁の味を見て、塩辛すぎたら湯を差す。 ワカサギには肉にほのかな甘みがある。これはまさにあまさぎの名にふさわしく、砂糖を加えない煮付けでこそ生きてくる。家庭によっては刻んだ生姜を加える例もある。地伝酒を使うのは、もちろん松江の料理だからだ。この煮付けは、肉がふかふかしていてとてもいい。新鮮なワカサギを使わないとにおいが出るし折れやすくなる。