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11月, 2021の投稿を表示しています

鹿と牛のスープ

 東南アジアに行くとふと素朴な牛のスープに出会うことがあり、これがなんとも心を落ち着かせる存在であったりする。油も、香辛料もぜんぜん入っていないような料理の存在はビジターの我々にとってとても重要だ。 そろそろ冷凍庫を整理すべきシーズンとなり、冷凍庫のあらゆる食材を調理しては食べている。大昔にもらった鹿肉の塊が出てきたので、前のあんかけスパのもと作りに同様、丸一本の赤ワインを使いきって肉を炊く。牛の肩肉?もあったのでこれと合わせて1.8キロをひとつの鍋で、あわせて5時間ほども炊く。けもの臭さは炊く時間を長くすれば抜けていくので、蓋をしないで、湯気で窓を曇られながら炊いていく。最後は汁気がなくなるまで炊きあげて、小分けして冷凍しておくとあんかけスパのもとだけでなく、なにかと使いやすい。チャーハンにいれてもいいし、もちろんカレーにもなる。 いくらか冷凍用に小分けしたあと、残りの部分に汁気を足して夜食を作った。炊きあげ肉一掴みに、水を3カップ加えて、沸いたら白菜の細切りとねぎを加える。ここにそばだしを小さじに1、塩を少々で仕上げる。そばだしというのは沖縄で売られている濃縮タイプの沖縄そばのもとで、こんなものがなくてもわずかに化学調味料を加えてもいい。要するに肉のうまみだけでは少しバランスが悪いので、別のうまみと合わせてやるというだけだ。鹿の肉は赤くて、脂気がぜんぜんない。疲れきった体にこの夜食を吸い込み、台湾の夜を思い出していた。

ボラ飯

 炊き込みご飯の類はたいてい炊飯器で作っている。これは鍋で作ると普通の家庭では真似できないだろうから、という理由と、私自身が手前を減らせる炊飯器がすきだから、というふたつの理由がある。 色々な料理をするときに、うまくできる最低ロットはどのくらいか、ということをよく考える。私は独り暮らしだし、今や単身あるいは二人家庭も多い。昔の食事は大所帯が前提だから、そのままのレシピを現在に転用できないことも間々だ。炊飯器で作る炊き込みご飯の場合、私は2合半がそのうまくできる最低ラインだと思っている。2合でもできる場合はあるが2合半あると米の上に具材を乗せてもある程度、理想の程度には汁に浸かる。 柳川の松本鮮魚さんにお願いして、産卵期のボラを都合してもらい数日食べている。ここでは瀬戸内のボラ飯を作ってみたのでその作り方を書いておきたい。ボラの肉150グラム(実際にはもう少し多くても構わない)の皮をとって、厚さ2センチ程度の大きめの削ぎ切りにする。丼鉢にうまくち醤油を100ccとり、ボラの肉を浸す。背骨があればこれも同じく醤油に浸す。これで1時間ほど置くとしっかり浸かる。 小さめのにんじん1本は縦に薄切りにしてから細かく切り、洗いごぼうを1本をささがきにする。里芋は皮を剥いて、輪切りにしてからさらに縦にいくらか、にんじんよりは少し大きめに切る。しいたけ2枚は石づきを取って薄切りする。 米2.5合を研いで、2.5合分の水加減で1時間置く。ここににんじん、ごぼう、里芋を加えて、その上にボラの漬け身、しいたけ、漬け汁を全部加えて、炊き込みご飯モードで炊く。炊き上がったら骨の部分は取り出して、肉がほぐれるように全体を混ぜ合わせる。この料理の味付けは本来醤油だけだけれど、好みで甘みをつけてもいい。分量で言えば白砂糖を小さじに1から3杯くらい。 この時期のボラにはしっかりと脂が差していて、うまみもある。風味が足りないので面白みには欠けるものの、優等生の魚であることには間違いない。尾の方の肉を使えば小骨もなく、鯛めしなんかよりずっと楽チンだ。

きゅうりのビール漬け

二月ほどにわたる、長かった繁忙期がおわり、ようやくにしてひとり家で酒をゆっくりと嗜む余力が出始めた。ところがもう長いこと家でも酒を飲んでいないからか、変に早く酔っぱらってしまうことが(我が家の)ちょっとした問題になっている。せっかく誕生日にと知人からもらい受けた杉能舎のペールエールも、飲みきらないままでこてんと寝てしまった。 そんな翌日のビール、日中に飲めずに夜になったら気が抜けて、味も大きく変わってしまう。残念ながら、ビール煮に使うくらいしか用途がない。そんな残念な気持ちで残りのビールを眺めていたら、ふとどこかで食べたきゅうりだったかあるいは別のウリだったかのビール漬けのことを思い出してきた。そうか、ビール漬けにすればいいじゃないか。ちょうど冷蔵庫に都合よくきゅうりが3本あったので、これでビール漬けを作ってみたら思わずおいしかったので、ここに記録しておく。 きゅうりはへたと尻尾を切り、三等分にしてから建て半分に割る。これをジップロックのまがいものに入れて、塩小さじ2分の1、ビール約60から70cc、それに余らせていた納豆の付属たれひとつ(ちょっと甘い。私はよくタレを余らせる)を加えて、袋の外から軽く揉む。これを冷蔵庫に入れて、3時間くらいしてからまた揉み、空気をできるだけ抜いて半日置いておいた。これでもうできあがり。なんと簡単なんだろう。そして、うまい。ビールの味のせいか、一気にばくばくと食べてしまう。