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甘酒汁

 甘酒という飲み物を知っていても、どうやって作るかは知らないものだ。甘酒には麹(米麹)の助けを借りて作る米麹甘酒(言ってみれば発酵甘酒)と、酒粕を溶いて砂糖を加えて作る酒粕甘酒がある。私が毎年除夜の鐘を撞きに訪れる寺で振る舞われるのは前者で、またもうかなり前になくなってしまったけれど、母方の生家の氏神さまでは初詣に米麹甘酒の振る舞いがあった。大量に作るなら酒粕甘酒の方が断然楽だけれど、しかしやっぱりうまいのは米麹甘酒である。 米麹甘酒は麹カビがアミラーゼによってデンプンを糖に変えていくことによって出来上がる。米を柔らかく炊いて、ある程度冷ましてから板麹をよくほぐしたもの、あるいはバラの麹を加える。炊飯器なら保温という便利な機能があるので、70度を上回らないように蓋は閉めないで、ときどきぬるま湯を加えながらしゃもじでかき混ぜるとだんだんと香りが出て甘くなってくる。熱くなりすぎていたら水を、適温ならぬるま湯を加えることである程度加減する。だいたい5合の米に板麹が1枚。ただしこの半分でもできる。ちがいは出来上がりの甘さにあり、板麹を多めに加えた方がより甘くなる。2時間ほど様子を見て、うまく発酵が進んでいそうなら保温を切って、蓋を閉めて6時間ほど置くと、甘酒になる。私は毎年かぶら寿司を仕込むので、そのために年に一度は甘酒を作ることになっている。 今年は例年よりたくさんのかぶを使ったので、それに合わせて甘酒をたくさん作ったのが、思ったよりも必要なくてかなり余ってしまった。薄めて甘酒として飲むのはもちろんだけれど、一部を甘酒汁にすることにした。 鍋に湯をわかして、かつおぶしのだしをとる。一番だしでなくて二番だしにする。金時人参と大根の拍子切したもの、だしに使ったあとの野菜昆布、これも拍子に切って加える。中火で炊いて、煮えたら出てくるあくを掬っておく。ここに甘酒を適当に加えて、市販の甘酒の半分くらいの濃度にする。あとは白菜も加えて、最後は薄口醤油少しで整える。入れすぎてはダメ。 甘酒汁は粕汁の甘酒バージョンだ。薄口醤油ではなくて、白味噌を加えたってもちろんおいしい。甘いだけの甘酒よりも、塩味があった方がよくすすむ。ここに餅を加えてもいいし、ひきわり納豆を加えて納豆汁にしてもいい。この場合は、煮立ったところにさらっと混ぜたひきわり納豆を加えてすぐに火を止める。かき混ぜてうつわに盛る

ぶり大根

 ブリと言えばぶり大根というくらい、ぶり大根はポピュラーな料理だ。ブリと大根を醤油などで味付けて炊いたもので、元来は骨周りやかま、頭などのあらを使った料理だったはず。それがいつの間にか切り身の料理に変化してきている。ブリには間違いなく部位ごとになすべき料理がある。骨周りはぶり大根、腹のところを含めた切り身は塩焼き(ただし粕漬けも捨てがたい)、かまも塩焼き。で、尾の身を刺身につくる。一昔前にはブリを一本、または半身で買うことがわりとあったので、このようにして消費していた。なおぶり大根を覚えたのは自分の家庭の料理からであり、これはスーパーの魚屋で売られているあらの部分(かまと切り身を除いた部分)を買ってきて作っていたものだ。 ぶり大根については基本をおさえておけばなんにも工夫は要らない。ブリと大根は下茹でする。大根は大きめのものを半分ほど、好みの厚さ、だいたい少し厚めに切って、庶民なので皮は薄く剥く。厚めに剥くとあるレシピがあるがこれだと大根の甘みが十分でない。ブリのあら(私は骨と腹のすいたところしか使わない。頭も入れていい)は表面を洗い流しておく。今回はだいたい6キロのブリの骨と腹、そして中骨のまわりの部分を半分使う。鍋に大根を並べてかぶるくらいの倍になるくらい、たっぷりと水を加えて中火にかける。沸騰したらここにブリのあらを乗せて、表面に火が通ったら一気にざるにあける。ブリは冷水で洗い、骨の周りについている血のかたまりや、表面のぬめりをある程度落とす。鍋に大根とブリを戻し、かぶるくらいの水と、酒を2分の1カップ、梅干しを二個、しょうがを少量(ただし厚めに切る)加えて中火にかける。好みでこんにゃくや厚揚げを入れても構わない。ぼこぼこと煮たってしばらくあくが出るのでこれをしっかり取る。ここへ好みの砂糖を加えて、十分溶けてから少しの濃口醤油を加えて15分ほど煮る。その後、残りの醤油を加える。このとき、先に入っている砂糖の甘みに少しずつ醤油味を足していくイメージで、細かく味見しながら進めてここだという量で止める。砂糖は中双糖を2分1カップほど使ったものだから、醤油もだいたい同じくらいの量だったのではないか。醤油を加え終えたら必要に応じて落し蓋をして30分弱火で炊く。蓋も乗せる。この状態で一晩置く。 翌日また弱火にかけて、30分ほど煮る。味を見て、甘みや醤油味が薄ければ足す。

小豆粥

 正月明けに小豆粥を食べる家庭がある。それは1月7日であったり、15日であったり、20日であったりする。小豆は邪気を祓うという。小豆粥の習慣は地域を限定しないし、家庭によってはさまざまな時期に食べていた。私は特に時節に関係なく、小豆と出会ったら買ってきて作る。量り売りのものを量ってもらって買い求めるのが何よりうれしい。 小豆粥の作り方はいたって簡単だ。ここでは二人分と仮定する。小豆は好みのものを選ぶけれど、小粒がいい。小豆でなくささげてもいい。小豆2分の1カップは洗って鍋に十分な水とともに入れ、水から中火で炊いて、沸騰して数分でざるにとり茹で汁を捨てる。すぐに新しい水を3カップほど加えて、中火で15分ほど炊いておく。ここへ洗った米2分の1合を加え、水3カップを足してまた中火のままで炊く。吹き零れそうになる場合には少し火を弱める。20分ほど炊いたら塩をひとつまみ、砂糖をひとつまみ加えて(砂糖は好みでなくてもいいが、なぜか加えるとうまい)、あとは米粒が好み硬さになったところで止める。水気が足りなければ適当に差し水したらいい。 この小豆粥には甘栗やさつまいもがとても合う。甘栗の場合には煮上がる直前に大きめに刻んだのを加えるし、さつまいもなら角切りにしたものを米と同時に加えて炊く。小豆粥の中に浮かぶほのかな甘みがやみつきになる。舟和の芋ようかんでもいい。けれど、やっぱりいちばんは甘栗で、ちゃんと皮つきのものを買ってきて剥いて使う。香ばしさが段違いだ。