幼少の頃の食べ物に関する記憶というものは強く残るもので、なにかの拍子にフラッシュバックするかのように頭にわいて出てくることがある。私はひとつずつ、だいすきな食べ物を増やしながら成長した。だいすきになっていった食べ物の記憶はとてもいとおしく、かけがえのないものだ。
我が家で単に青菜と言えばほうれん草のことで、とにかくほうれん草のお浸しをしょっちゅう食べていた記憶がある。私はほうれん草の独特の味がだいすきで、特に近所の方からいただく野趣あふれるものの味がいい。そういえば祖母もほうれん草をよく育てていた。
このだいすきなほうれん草だけれど、旬の冬場、特にどっさりといただくことがある。そんなときにはビタミン鍋、あるいはほうれん草鍋と呼ばれていた鍋物になっていた。我が家の食卓でもっとも多い鍋はこの鍋だったように思う。今でも山盛りにほうれん草が売られているのを見つけると、鍋がいいかな、なんて思って独り暮らしとは思えぬ量を買い込んでしまう。
ほうれん草は土が多いのでよくよく洗う。葉っぱを1枚ずつ外して根元のところをよく洗い、二等分あるいは三等分に切ったものをまたボールに入れて水でザブザブと洗う。根の赤いところをズバッと切り落としてしまう人がいるが、ここに甘みが凝縮されているのでそんなもったいないことはしない。鍋に水3カップを沸かして、かつおだしをとる。だしパックでいい。そこにこいくち醤油と酒を各大さじ1加える。味つけはこれだけで、沸騰させては豚肉とほうれん草を茹でつつ食べていく。次第に汁に豚肉とほうれん草の味がついていくから、味わいは少しずつ変化していく。余計な甘みを加えないのでほうれん草の苦味も甘味もよく分かる。豚肉はなんでもよく、肩やももの薄切り、小間切れ肉でもいい。脂の多いばら肉は好みでない。あと、豆腐を入れること。今回は切らしていたのでなし。これは1人の分量だけれど、ほうれん草は2束食べる。食べてしまう。豚肉は150グラムもあれば十分。メインはあくまでほうれん草である。
我が家ではしょっちゅう登場したこの鍋の、中に入った豚肉がももの薄切りか、あるいは小間切れ肉かで、子供心に我が家の懐具合を推し量ったものだった。
私が大学に入ってかんじた不思議のひとつに、鍋パーティー、鍋パをするときに決まって「鍋のもと」を買い求めること。ただでさえ金のない大学生が、なんで鍋のもとなんて買うのだろう、という疑問だ。我が家では高くつく鍋のもとを買ったことはなかった。
我が家で単に青菜と言えばほうれん草のことで、とにかくほうれん草のお浸しをしょっちゅう食べていた記憶がある。私はほうれん草の独特の味がだいすきで、特に近所の方からいただく野趣あふれるものの味がいい。そういえば祖母もほうれん草をよく育てていた。
このだいすきなほうれん草だけれど、旬の冬場、特にどっさりといただくことがある。そんなときにはビタミン鍋、あるいはほうれん草鍋と呼ばれていた鍋物になっていた。我が家の食卓でもっとも多い鍋はこの鍋だったように思う。今でも山盛りにほうれん草が売られているのを見つけると、鍋がいいかな、なんて思って独り暮らしとは思えぬ量を買い込んでしまう。
ほうれん草は土が多いのでよくよく洗う。葉っぱを1枚ずつ外して根元のところをよく洗い、二等分あるいは三等分に切ったものをまたボールに入れて水でザブザブと洗う。根の赤いところをズバッと切り落としてしまう人がいるが、ここに甘みが凝縮されているのでそんなもったいないことはしない。鍋に水3カップを沸かして、かつおだしをとる。だしパックでいい。そこにこいくち醤油と酒を各大さじ1加える。味つけはこれだけで、沸騰させては豚肉とほうれん草を茹でつつ食べていく。次第に汁に豚肉とほうれん草の味がついていくから、味わいは少しずつ変化していく。余計な甘みを加えないのでほうれん草の苦味も甘味もよく分かる。豚肉はなんでもよく、肩やももの薄切り、小間切れ肉でもいい。脂の多いばら肉は好みでない。あと、豆腐を入れること。今回は切らしていたのでなし。これは1人の分量だけれど、ほうれん草は2束食べる。食べてしまう。豚肉は150グラムもあれば十分。メインはあくまでほうれん草である。
我が家ではしょっちゅう登場したこの鍋の、中に入った豚肉がももの薄切りか、あるいは小間切れ肉かで、子供心に我が家の懐具合を推し量ったものだった。
私が大学に入ってかんじた不思議のひとつに、鍋パーティー、鍋パをするときに決まって「鍋のもと」を買い求めること。ただでさえ金のない大学生が、なんで鍋のもとなんて買うのだろう、という疑問だ。我が家では高くつく鍋のもとを買ったことはなかった。