東京には古いうなぎ屋がまだいくつも残っている。しかしその中でも、この「いかだ」を今も出してあるところはどれだけあるのだろう。実際のところ、2、3軒しか残っていないのではないだろうか。いかだ、あるいはいかだ焼きというのは、小振りなウナギをいくつかまとめて串に打ち、蒲焼きにしたもののことで、関西にはない文化だ。ウナギの大きさは1本100から150グラムほど。通常のウナギが今どきだと170から250グラムくらいなので、これと比べてみるとかなり小さい。
大江戸は寛政12年、1800年の創業なので、店を初めてから200年以上になる。東京にはこんな店があちこちにあるからおそろしい。その大江戸が土曜日限定でいかだを出している。通常、東京のうな重は1匹のウナギを真ん中で半分に切って、お重に乗っけてある。これがいかだの場合、切らずに1本なりのまま、何匹か乗っていることになる。大江戸では2本いかだと3本いかだ、さらにそれぞれに小と大とがあり、このうちの3本いかだ小を頼んでみる。
いかだには小型個体に特有の柔らかさがあり、頷きながら食べる。タレはあっさりとしていて粘度が低く、甘さを控えた関東の味そのもの。小さいものをたくさん食べるというのは、明らかに資源にダメージが大きいものだけれど、だからといってこういうものを一律に否定してはいけないと思っている。