あらめ巻きというものがある。昆布巻きは今や全国各地にあり、知らないという人はなかなかいないだろう。しかし、あらめ巻きはどうか。インターネットでざっと調べてみると、あらめ巻き、あるいはめ巻きと呼ばれるものが三重県鳥羽、静岡県御前崎周辺、伊豆、山梨県河口湖周辺、そして佐渡島にある。いずれの地域でもあらめと呼ばれるもの、ただし、佐渡のものはツルアラメで、太平洋岸のものはサガラメだ。北前船のやってくる日本海、あるいは沖縄とは違って、太平洋岸中部にはなかなか昆布はやってこなかった。かつての昆布の入手できる範囲が限られていた時代の名残として、このあらめの文化が見られる。
さてこのあらめ巻きは、濃尾平野の一部、そして、愛知県西部の海浜部にも点々とその利用がある。海のない濃尾平野には、鳥羽からの行商がさまざまな海産物を運んでいた。それが塩漬けの魚や、干物や、あるいは海藻類であったのだ。この行商を通じてやってきたあらめを使っていたわけだ。現在ではこうした風習は消えてしまっているものの、今でも年の瀬が近付くといくつかのスーパーマーケットで刻んでいない丸ごとのあらめ(基本的に蒸しあらめ。ただし、かつては単に干したものもあったような気がする)を目にすることができる。少なくなったとはいえ、今でも家庭であらめ巻きを作る方がいるのだろう。あらめ巻きの芯の基本はフナだが、モロコやシラハエ、ハゼを巻くことも、野菜を加えることも、野菜だけのことも、また芯なしのこともある。三角に巻くのは海津や立田の一部の習わしで、ほかは単純な俵型が多い。懐かしくなって蒸しあらめを1袋買ってみた。実に10年以上ぶりである。
さて、あらめ巻きの作り方。これももちろん、家庭によって少しずつ違っているはずである。私の例はごく少ないが、見聞きした内容をもとに調理してみる。
あらめを40グラム(葉8枚)さっと濯いでから水に浸す。1時間ほどするとかなり柔らかくなってくるので、表面に黒っぽいぬめりのようなものが出てくるから、よく指の腹でこする。だいたいこれが取れたらたっぷりの水にあらめを入れ、強火で沸かす。沸いたら数分間煮て、ざるにとる。
芯にするフナは鱗と腹を取り、頭、体、尾部と三等分にする。
今日はあらめが少ないので、1巻きに1パーツだが、2つ重ねて包んでもいい。フナを芯にして、ちまきのような要領で三角に巻く。あらめには大抵幅の狭いものと広いものとが混ざっているから、まずは幅の狭いもので巻き、そのあと広いもので巻いての2枚を巻き付ける。また巻き付けるときには、幅の広い側、つまり、根元とは反対の方向から巻き付ける。根元の太くて硬い部分はもちろん切ってから使う。巻き終えたらその部分に楊子を指して止める。楊子はフナまで貫通していい。今回は俵型と両方作った。俵型にするときには、端のギザギザした部分を切り取って使う。切り取った部分は捨てずに一緒の鍋で煮ると、それ自体もおいしいし、また茹で加減を見るときに使える(味見できる)。
俵のほうは、一旦楊子を止めたあとに、水で1時間ほど戻したずいき(里芋の茎)を絞って、これで巻く。巻きが二重になるように巻いて結ぶ。ずいきには皮のほう(緑や赤)と内側のほう(白っぽい)があるので、皮が内側になるようにして巻く。今時はみんなかんぴょうを使っていることだろう。
鍋に目一杯の湯、だいたいこのあらめ巻きが浸かるよりも1.5倍ほど多い目に沸かして、そこに濃口醤油、ざらめ、酒を各大さじ3杯加えて沸かす。沸いたところへあらめ巻きを投入し、中強火で15分ほど煮る。この間出てくるあくはちゃんと取る。その後は弱火(重要)にして煮る。あらめ巻きは味を染みさせることと、色を黒くするために何日かに分けて煮る必要がある。今回は初日に1時間煮て、常温で1日置く。次の日、また夜に火をつけて、2時間半煮る。煮終わる直前に濃口醤油とざらめを各大さじ1杯ずつ足す。また次の日、今度は濃口醤油だけを大さじ1杯足して、また弱火で4時間煮る。合計7時間半。煮汁から出ている部分は煮えないから、水が減ったらこまめに足す。とは言っても、1カップくらいずつ足すような塩梅だ。こうして日を分けて煮ていくと、煮汁はどんどん黒くなり、実にうまそうになってくる。
最後の1時間は水を足さずに煮詰めていき、煮汁の水深が2センチ程度になったらみりんを大さじ1杯加え、中火に沸かして煮汁を絡め、照りを出す。こうして、多少汁気を残した状態で完成となる。
あらめには昆布のような強いうまみがあるわけではないが、ユニークな海藻らしい風味が特徴。ヒジキに似ているがちょっと違う。ただし、これが強すぎるとクセが強くて食べられないから、調理の過程であれこれ工夫が必要になるわけだ。あらめ巻きの作り方は世の中にきちんと記録されたものが私の知る限り、ない。濃尾平野と愛知県に限っても、色々な地域のあらめ巻きを記録しておくべきだろう。
さてこのあらめ巻きは、濃尾平野の一部、そして、愛知県西部の海浜部にも点々とその利用がある。海のない濃尾平野には、鳥羽からの行商がさまざまな海産物を運んでいた。それが塩漬けの魚や、干物や、あるいは海藻類であったのだ。この行商を通じてやってきたあらめを使っていたわけだ。現在ではこうした風習は消えてしまっているものの、今でも年の瀬が近付くといくつかのスーパーマーケットで刻んでいない丸ごとのあらめ(基本的に蒸しあらめ。ただし、かつては単に干したものもあったような気がする)を目にすることができる。少なくなったとはいえ、今でも家庭であらめ巻きを作る方がいるのだろう。あらめ巻きの芯の基本はフナだが、モロコやシラハエ、ハゼを巻くことも、野菜を加えることも、野菜だけのことも、また芯なしのこともある。三角に巻くのは海津や立田の一部の習わしで、ほかは単純な俵型が多い。懐かしくなって蒸しあらめを1袋買ってみた。実に10年以上ぶりである。
さて、あらめ巻きの作り方。これももちろん、家庭によって少しずつ違っているはずである。私の例はごく少ないが、見聞きした内容をもとに調理してみる。
あらめを40グラム(葉8枚)さっと濯いでから水に浸す。1時間ほどするとかなり柔らかくなってくるので、表面に黒っぽいぬめりのようなものが出てくるから、よく指の腹でこする。だいたいこれが取れたらたっぷりの水にあらめを入れ、強火で沸かす。沸いたら数分間煮て、ざるにとる。
芯にするフナは鱗と腹を取り、頭、体、尾部と三等分にする。
今日はあらめが少ないので、1巻きに1パーツだが、2つ重ねて包んでもいい。フナを芯にして、ちまきのような要領で三角に巻く。あらめには大抵幅の狭いものと広いものとが混ざっているから、まずは幅の狭いもので巻き、そのあと広いもので巻いての2枚を巻き付ける。また巻き付けるときには、幅の広い側、つまり、根元とは反対の方向から巻き付ける。根元の太くて硬い部分はもちろん切ってから使う。巻き終えたらその部分に楊子を指して止める。楊子はフナまで貫通していい。今回は俵型と両方作った。俵型にするときには、端のギザギザした部分を切り取って使う。切り取った部分は捨てずに一緒の鍋で煮ると、それ自体もおいしいし、また茹で加減を見るときに使える(味見できる)。
俵のほうは、一旦楊子を止めたあとに、水で1時間ほど戻したずいき(里芋の茎)を絞って、これで巻く。巻きが二重になるように巻いて結ぶ。ずいきには皮のほう(緑や赤)と内側のほう(白っぽい)があるので、皮が内側になるようにして巻く。今時はみんなかんぴょうを使っていることだろう。
鍋に目一杯の湯、だいたいこのあらめ巻きが浸かるよりも1.5倍ほど多い目に沸かして、そこに濃口醤油、ざらめ、酒を各大さじ3杯加えて沸かす。沸いたところへあらめ巻きを投入し、中強火で15分ほど煮る。この間出てくるあくはちゃんと取る。その後は弱火(重要)にして煮る。あらめ巻きは味を染みさせることと、色を黒くするために何日かに分けて煮る必要がある。今回は初日に1時間煮て、常温で1日置く。次の日、また夜に火をつけて、2時間半煮る。煮終わる直前に濃口醤油とざらめを各大さじ1杯ずつ足す。また次の日、今度は濃口醤油だけを大さじ1杯足して、また弱火で4時間煮る。合計7時間半。煮汁から出ている部分は煮えないから、水が減ったらこまめに足す。とは言っても、1カップくらいずつ足すような塩梅だ。こうして日を分けて煮ていくと、煮汁はどんどん黒くなり、実にうまそうになってくる。
最後の1時間は水を足さずに煮詰めていき、煮汁の水深が2センチ程度になったらみりんを大さじ1杯加え、中火に沸かして煮汁を絡め、照りを出す。こうして、多少汁気を残した状態で完成となる。
あらめには昆布のような強いうまみがあるわけではないが、ユニークな海藻らしい風味が特徴。ヒジキに似ているがちょっと違う。ただし、これが強すぎるとクセが強くて食べられないから、調理の過程であれこれ工夫が必要になるわけだ。あらめ巻きの作り方は世の中にきちんと記録されたものが私の知る限り、ない。濃尾平野と愛知県に限っても、色々な地域のあらめ巻きを記録しておくべきだろう。