沖縄の日暮れは遅い。外は暑いけれど、湿度は福岡よりも低いのではないか。ときどき、1時間ほどざーっと雨が降ってくる。
たんまり買い込んだ魚を、頭を整理しながら下処理しては、どういう順番でどのように食べていくか決めていく。5キロほどあるオーマチ、アオチビキの釣りのもの。これをおろして、少しずつ使っていく。オーマチは肉に水気があり、舌にあたりのよい肉質が特徴だ。これは刺身と、てこねずしにつくる。単にマチとしてつぶして売られていたイシチビキは、沖縄風の煮付けにする。冷たい鍋に並べてから、泡盛、黒砂糖、醤油を注いで、川ごと厚く切ったしょうがとともに強火でガンガンに炊きあげる。これは必ずしも沖縄風ではないけれど、味付けは沖縄の飲み屋にならったものだ。
フカヤービタローと呼ばれるハナフエダイには、2種が混在することが最近分かった。このうちのひとつがハナフエダイであり、もうひとつがウスハナフエダイだ。両者はきわめてよく似ているが、ハナフエダイは背の黄色と青色の斑紋が明瞭なので、一見ウスハナの方が鮮度が悪いように見えてしまう。同じ釣りで釣れた同じサイズのものを買って、食べ比べにきをてらうことなくマース煮とする。両者の味わいは全く区別がつかないが、ウスハナはわずかに肉が柔らかい印象だった。
刺身盛りはブチブダイ、コブシメ、キハダ、イトヒキフエダイ、ゴマアイゴ、とする。写真ではどれがどれだか分からないけれど、白身のそれぞれに個性があって楽しい。これだけの量を作っても、若者で食べるとすぐになくなっていく。カーエーことゴマアイゴは、沖縄の三大高級魚には入らないが、これを専門に狙って釣るひともあるような魚だ。本種は刺し網による漁獲が多い。今回は脳天を見事に突かれた、2キロほどのものを入手して、ためしに背節を刺し身に作ってみた。するとこれがクセになるようなうまさなのだ。腹からはきちんとアイゴのにおいがするのに、肉からはその卑しいにおいが気になるほどは出てこない。これはこの夜一番の発見だった。カーエーを専門に狙ううちなーの釣り人も、きっと刺身では食べていないだろう。