この頃、イナダシュンスケ氏によるあんかけスパコラムが続投されている。あんかけスパは、私にとってのソウルフードのひとつでもあり、しかしそれが帰省しなければ食べられないという料理でもある。家庭で作るにはヨコイの乾麺と、あんかけソースの缶詰めを買って、乾麺の袋に書いてあるとおりに作るのが簡単だ。とくにカントリーとかミラカンだったら、茹でて炒めた麺の上に炒めた野菜、あるいはそこにベーコン、ソーセージの加わったものを乗せるだけなので、実に容易い。しかしこれでは自分好みの味を産み出せないという側面がある。麺は乾麺を愛知県で買ってくるとして、やはりソースは自分で作りたい。そこで、ここに作り方の一例を書き留めておく。
使う材料はにんじん、じゃがいも、セロリ、トマト、玉ねぎ、にんにく、牛肉、赤ワイン、粒コショウまたはあらびきコショウ、塩、濃口醤油、七宝タカラソーススーパー、ケチャップ、サラダ油、そして味の素。たぶんこれだけだろうが、メモし忘れもあるかもしれない。今回は冷凍してある牛肩煮込みを材料に使っている。これは、牛の安い肩肉、これのたくさんのが業務用スーパーに売られている。これをスライスしたにんにく、くし切りのたまねぎと共にサラダ油で炒めて、表面に焼き色がついたら赤ワインを肉が浸かるくらいに加える。強火で沸かしたらあくを丹念にとって、水を加えながら5時間くらい弱火で煮る。最後には水気をほとんど飛ばして、湿っぽいフレーク状にして小分けして冷凍しておく。そのまま食べてもうまいが、たくさん一度に作っておくとさっと時雨煮にしたり、カレーにしたりシチューにしたりとなかなか重宝する。
さて、この牛肩煮込みがないとこの日のレシピは始まらない。にんじん大1本、普通の大きさのじゃがいも(今回はメークイン)1個、セロリ1本の茎のところをすべてすりおろす。にんじんは皮ごとでいい。フライパンにサラダ油を多めに、だいたい大さじ4杯ばかり敷いて、このすりおろした野菜を汁ごと中火で炒める。汁気がなくなってきたらつまんで味を確認し、にんじんの角がなくなってきたらここにくし切りしたトマトひとつを加えてまた炒める。トマトに火が通ったら水3カップを加えて15分、また水1カップを加えて15分弱火で煮る。ときどき木ベラでかき混ぜる。ここに解凍した牛肩煮込み250グラムを加えて、ケチャップ50グラム、七宝タカラソーススーパー20グラム、濃口醤油小さじ2を加えて、さらに水1カップを加えて30分弱火で煮る。このあたりで味見をして、じゃがいものシャリシャリがなくなっていたら十分だ。これをざるに入れて、押し付けて濾してやるとどろっとしたソース部と、主に肉片からなる固形部に分かれる。この固形部は簡単に言えばコーンビーフみたいなもので、冷ましてからふかしたじゃがいもとサラダにしたり、パンに挟んでサンドイッチで使える。で、このドロドロの方があんかけソースの元で、だいたい500ccとれた。つまりこれが5人分だ。ソースの味変を楽しめるように、最低限の味付けにしてある。あくまでこれはあんかけソースのモト、なのだ。
さて、今日は一人分なので、このモト100ccにたいして、水1カップ半を加えて伸ばし、小鍋にて中火で加熱する。十分熱くなったら味の素わずか、塩少々、あらびきコショウたくさんを加える。ここにコーンスターチと、少量の水で溶いた片栗粉を加えれてかき混ぜながら加熱すればあんかけソースの完成だ。片栗粉が多くて固くなりすぎたら水で薄めたらいい。
ヨコイの乾麺は袋に書いてあるとおりに茹でる。この間、横のフライパンを熱してピカタを作っておく。作ったピカタは皿によけておく。
麺が茹で上がったら水を切り、フライパンにサラダ油(オリーブ油でもいい)を敷いて、麺をしっかりと炒める。麺が炒まったら皿に盛り、周囲にあんかけソースをかけ回して、最後ピカタを乗せる。できあがり。
これはトマトを最低限しか使わない、トマトの味のうすいあんかけスパだ。好み次第でトマトを多くしたりすると味を変えられる。余ったモトは小分けして冷凍しておくと次に使うことができる。途中とちゅうにもっと手を抜くことはいくらでもできるので、それはまたそのうち書き足す。