私は根が貧乏性だし、煮物にしても味噌汁にしても、大根の皮はたいていごく薄く剥く。料理の本には厚めに剥くという表記が頻出するけれど、それは家庭的ではないと思う。
そんな私もおでんをやるときだけは皮を厚く剥く。大根を太く輪切りにして、断面を見ると皮の内側に円を描く不透明な線がある。これのギリギリ内側を通るようにして剥くと分厚い長方形の皮ができる。この皮がもったいないので、薄皮とはちがって捨てずに使う。長方形になった皮を真ん中で真っ二つにして、そのまま細く刻む。刻んだら外に出して3日ほど干す。干物ネットに入れるのが楽だけれど、使い古しの木のまな板の上に広げて干したりもする。五分くらいの干し加減でひとつつまんでしがんでみるといい。ふしぎな甘みがある。大根の中でいちばん甘いのはたぶんこの部分だ。
しっかり干したら日を置かずに使う。さっと水洗いしたら40度くらいのぬるま湯に放り込んで完全に戻す。戻し汁も使うので、湯を入れすぎない。大根一本分でせいぜい1リットルくらいだろうか。もっと少なくてもいい気がする。この戻し汁が甘くておいしいので、少しだけ味見に飲む。でも飲みすぎると料理の味が薄くなるので少しだけ。茶碗に一杯くらいなら飲んでしまってもいいだろう。この汁、小さい頃風邪を引いたときに飲んだはちみつ大根を思い出す。
戻し汁、大根、そこに厚揚げか油揚げを刻んで加え、また鷹の爪も少し加えて、濃口醤油ときび糖少し、どちらも本当に少しだけ加えて強火で炊く。水気がなくなってきたら焦げないようにかき混ぜて、完全に水気を飛ばす。水が飛んでくると油揚げの脂分が仕事をして、味がよくなる。