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牛バラ肉のカレー

急にカレーを作りたくなることがよくある。それは深夜だったり、起き抜けの早朝だったり、普通にご飯時のこともある。カレーという料理はとても単純な足し算なので、慌ただしい日常に追われてぐちゃぐちゃになった頭の中を整理するのにとてもいい。 冷凍庫を整理すると、業務スーパーで買い求めた冷凍の牛バラ肉が出てきた。これを使って、牛バラカレーを作ることにする。にんにく、厚切りの牛バラ(脂のにおいの気になる方は一旦湯引いてから使うといい)、斜めに四つに切ったソーセージを炒める。肉の量は食べたいだけでいいけれど、この日は二食分で、だいたい250グラム程度使った。火が通ったら塩コショウを少ししてからトマトジャガイモペーストひとかたまりを加え、BIO砂糖不使用ヨーグルトを1カップ加える。少し炒めたら水を加えて、レンチンしたジャガイモとともに30分から1時間程度煮込む。牛バラが好みの硬さになってきたら、好みの粉スパイスを加えて、塩とケチャップで味を整える。一晩寝かせておわり。この日のスパイスは単純に、コリアンダーと、黒こしょう、ターメリックのみ。いくらか汁っぽいカレーになる。 はっきりとヨーグルトのコクと酸味を感じられる悪くないできあがりだ。カレーは足し算。これがカレーの醍醐味だと思っている。

塩サンマの酢煮

福岡にきて不思議に思ったことのひとつが、塩サンマのことだ。ふつう、塩サンマというと、サンマの獲れない時期に売られているものではないだろうか。そもそも、塩サンマを全く見かけない地域も多い。それが、福岡では年中店頭にあるし、生のサンマがある時期であっても塩サンマを選んで買っていく光景をたびたび目にする。 塩サンマは生のサンマよりも焼き網にくっ付きにくく焼きやすいので、私もたまに買ってくる。しかしそういうときに限ってほかに早く食べないといけないものがやってきたりして、ついつい冷凍庫に入れっぱなしになる。これが冷凍庫の奥底から出てきた。ほんの少し脂で焼けているが、捨てるのはあまりにもったいない。そういうわけで、酢煮をしてみようかと思いつく。 塩サンマは解凍後、何等分か、食べやすい大きさに切り分けて、頭としっぽの先は捨てる。鍋に湯をわかし、しょうがを薄く切ったのと酢を適量入れて、再度沸騰したところへサンマを入れる。3分ほど茹でたら一旦ざるにとる。新たに湯をわかして酢を3分の1カップ、白砂糖を大さじ2杯程度に酒少々を入れて、煮立てたものにサンマと梅干し、昆布を入れる。中弱火〜弱火(あまりボコボコとしていると、サンマの皮が剥がれてしまう)で30分ほど煮たら、白醤油を大さじ2杯くらい入れて香り付けする。一旦火を切り、冷ましてから再び加熱したらできあがり。 砂糖加減は酢の種類によって多くしたり、少なくしたりする必要がある。多めに作っておくとしばらくは日持ちするので、おかずにつけるのがいい。ワタも一緒に炊くので、ほとんど抜けてしまうけれどほのかに苦みも残る。炊き合わせにするのも面白いんじゃないかな。

大江戸のいかだ

東京には古いうなぎ屋がまだいくつも残っている。しかしその中でも、この「いかだ」を今も出してあるところはどれだけあるのだろう。実際のところ、2、3軒しか残っていないのではないだろうか。いかだ、あるいはいかだ焼きというのは、小振りなウナギをいくつかまとめて串に打ち、蒲焼きにしたもののことで、関西にはない文化だ。ウナギの大きさは1本100から150グラムほど。通常のウナギが今どきだと170から250グラムくらいなので、これと比べてみるとかなり小さい。 大江戸は寛政12年、1800年の創業なので、店を初めてから200年以上になる。東京にはこんな店があちこちにあるからおそろしい。その大江戸が土曜日限定でいかだを出している。通常、東京のうな重は1匹のウナギを真ん中で半分に切って、お重に乗っけてある。これがいかだの場合、切らずに1本なりのまま、何匹か乗っていることになる。大江戸では2本いかだと3本いかだ、さらにそれぞれに小と大とがあり、このうちの3本いかだ小を頼んでみる。 いかだには小型個体に特有の柔らかさがあり、頷きながら食べる。タレはあっさりとしていて粘度が低く、甘さを控えた関東の味そのもの。小さいものをたくさん食べるというのは、明らかに資源にダメージが大きいものだけれど、だからといってこういうものを一律に否定してはいけないと思っている。

納豆チャーハンをつくる

納豆好き人間のなかでも、好みが別れるのが納豆チャーハンだ。納豆チャーハンには、いくつかのパターンがあると思っている。ひとつは、単に白ご飯をチャーハンに変えただけのもので、納豆を炒めないもの。ふたつめは、納豆がある程度炒められてはいるが、粘り気の残るタイプ。そして最後に、納豆が粘り気を感じられないほど、しっかりと炒められているものだ。それぞれに一長一短があり、ひとによってはこのタイプでないとダメだというのもある。あるいは、そもそも納豆とチャーハンの組み合わせを認めない強硬派(?)もいる。もちろん私はすべてのパターンに敬意を払っている。 この日は2番目に挙げた、粘り気の多少残るタイプを作ることにした。フライパンにサラダ油を敷いて、島唐辛子ひとかけと、実山椒を少し炒る。そこへ冷やごはんを投入し、ある程度パラパラになるまで炒めたら、納豆1パックをタレをかけず、少しほぐした程度で加えて、納豆がばらばらとご飯と混ざるように2、3分ほど炒める。ねばりが落ち着き始めたら角切りのキャベツ(納豆チャーハンと相性がよい)と、納豆のタレを加えて、キャベツに火が通るまで炒める。最後に塩コショウを少し振って味を整え、皿に盛ったら刻みネギを振る。 これにとろろをかけて食べるのが至高だと思う。実山椒と島唐辛子が効いていて、とてもおいしい。粘りはスプーンで掬い上げてもギリギリ、糸を引かない程度。納豆はだるま納豆を使ってみた。粒の大きい納豆ならば、少し刻んで使った方がいいだろう。

ヒラスズキをアクアパッツァにする

アクアパッツァはイタリア、ナポリ出身の料理だという。パッツァとはcrazyという意味で、要するに直訳的に理解すれば狂った水というわけだ。 たまたま、スズキに混じって、同じ値段(200円くらい)で売られていた小振りなヒラスズキがあるので、これでアクアパッツァを作る。まずは魚のうろこと内臓を取り、右半身をおろす(おろさなくても良い)。水気をよく拭き取ってから塩コショウで下味をつける。フライパンにたっぷりのオリーブ油、そこへにんにくを2かけ、スライスして入れて弱火で少し炒める。香りが出てきたら鷹の爪を放り込み、スズキを左側を下にして皮目に火が通る程度焼いて、ひっくり返して右側も同様にする。おおむね火が通ったら、トマト缶のホールトマトを半分くらい、真っ二つに割ったものを入れて、それから水を2カップ、塩をひとつまみ、日本酒を半合、それに白ワインビネガーを少し振りかける。本来は白ワインそのものを使うべきだけれど、なかったのでこれで代用。トマトの酸味がある料理なので、これで十分代わりになる。中強火で炊きあげて、火がおおよそ通ったところで空いているスペースにアコヤガイの貝柱と、菜の花を入れて火を通す。あとは魚を崩さないよう、スライドさせるように皿に盛ったらできあがり。粗びきこしょうを振ってもいい。 本来のアクアパッツァでは、ミニトマトやドライトマトを使うべきかもしれない。その方が上品な仕上がりになるのだけれど、別にトマト缶だっていいし、大きな生のトマトをくし切りにして使ったっていい。厳密なこだわりは無用だ。 煮えつまった汁は魚と貝のうまみと渾然一体となっていて、パンを浸して食べたりご飯にかけてもおいしい。当然メインのヒラスズキがうまくないわけがない。ヒラスズキという魚はおもしろくて、30センチ足らずの小さいものでも、すごく脂があって質のいいものがある。で、これはそういう個体だった。魚の目利きはできるほうなんです。

尾鷲の箱寿司、こけらずし

私は押し寿司、箱寿司を愛好している。決まったかたちのなかに、秩序があるのがこの寿司の特徴だ。何を隠そう私の出身地、愛知県も箱寿司県とでも形容すべきほどの地域であって、とにかく、箱寿司というものを敬愛している。そのため、どこへ行っても地域にオリジナルな箱寿司があるとついつい買ってしまう。でも、食味として好きなのはたぶん、にぎり寿司のほうである。 これは尾鷲の伝統的な押し寿司。押し寿司という味気ない名前で売られていたが、尾鷲ではこけらずしと呼ばれている。こけらを屋根に葺くように、いろいろのネタを並べてあることに由来するらしい。尾鷲だけではく紀伊長島でも作られていて、これは実は紀伊長島のもの。干し椎茸、にんじん、たけのこ(ごぼうだったかもしれない)、玉子、それにサンマ。季節の野菜の中にひとつ、魚を合わせるので、野菜はそのときどきによってキュウリであったりごぼうであったりもする。魚はサンマのほかにはサバも使われる。上からの写真では分からないが、横から見てみると、ご飯は実は薄くて、間にミョウガの葉が挟んである。 品があって、うつくしい。郷土寿司によくある甘い味付けに、見た目とのギャップを感じる。ツイッターでモンドリアンのコンポジションのようだというリプライがあったけれど、そのとおりというか、同じ源のうつくしさがある。昔はあの手の抽象画は苦手だったことを思い出した。

島唐辛子のピリ辛ボロネーゼ

スパゲッティは貧しい若者にとっての切り札的存在だ。なにせ、茹でて油で炒めるだけで立派な料理になるし、何とでも合わせられる。しかも、安いときている(高いものもある)。私も本当に本当にお金がなくなると、スパゲッティ(アーリオオーリオ・ペペロンチーノ)かきしめんになる。 そんなこんなであまりお金のないある昼のこと、なにかのスパゲッティをしようと思って、冷凍庫を開けると、先日作り置きしたペースト様のものが大量にある。これを使って、ボロネーゼを作ることにする。イタリア人に怒られそうな作りだけど、そこは許してほしい。 冷凍しておいた島唐辛子を2かけ、半分に切ってへたをとる。にんにくをスライスして、フライパンにオリーブ油を惜しげなく敷いてしばらく焦がさないように炒る。そこへ牛肉を粗くみじん切りにしたものを入れてさっと炒めて、玉ねぎのみじん切りも日が通る程度に炒めたら、解凍したトマト新じゃがペーストを投入する。ここへわずかのウスターソースと、塩とで味を整えるとボロネーゼの素ができあがる。スパゲッティは塩を加えてかために茹で、水気をしっかりと切ったらフライパンのボロネーゼの素の中に3分の1くらいずつ、かたまりにならないよう投入してよく合うように炒めて、水気が足りないようならスパゲッティの茹で汁を少し加えてもいい。盛り付けるときは麺をくるくると円弧を描くように乗せていき、最後にミート部分をスプーンなどで冠のようにあしらうとおいしそうな格好になる。 私は粉チーズがとっても好きなので、たっぷりかけて、ある程度食べたら途中でもう一度かけて食べる。ボロネーゼの肉は日本では一般に普通の挽き肉が使われるけれど、自分で肉を細かく切るか、または粗びき肉でやったほうがうまいと思う。